メイク残りが気になる。メイク残りは肌荒れの原因になる?セラクレンズやオイル洗顔でメイクが本当に落ちているの
2025. 07. 10メイク残りは肌荒れの原因になる?科学的根拠に基づく真実
「メイク残りが肌荒れや毛穴の黒ずみの原因になる」――そう信じている方は少なくありません。しかし、本当にそうなのでしょうか? 本記事では、科学的知見に基づき、この長年の疑問に終止符を打ちたいと思います。
大前提。実はメイク残りが肌荒れになるという科学的根拠はゼロ
まず、衝撃的な事実からお伝えします。「メイク残りが直接的に肌荒れを引き起こす」という明確な科学的根拠は、現在のところ存在しません。 多くの人が漠然と抱いているこの認識は、誤解や都市伝説に近いものと言えるでしょう。
美容皮膚科学の観点から見ると、肌荒れの原因は多岐にわたり、外部からの刺激、内部的な要因(ストレス、ホルモンバランス)、遺伝的素因などが複雑に絡み合っています。例えば、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎の原因として、特定の化粧品成分やアレルゲンが挙げられることはありますが、「洗い残されたメイクそのもの」が直接的な皮膚炎やニキビの引き金となるという明確な研究結果は、現在研究では報告されていません。
むしろ、「肌のバリア機能の低下や過剰な皮脂分泌、アクネ菌の増殖などがニキビの主要な原因である」という見解が一般的です。
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なぜできた?メイク残りが肌荒れの原因になるという都市伝説
都市伝説となると言い過ぎの部分もあるかと思いますが、この説の多くの部分がある成分がその人にとって肌に合わない成分があり、たまたま肌が荒れてしまったが正解のような気がします。
特にメイクは色があり、塗った部分が見えますし、取った時も取れたが分かりやすいため原因にしやすい面もあるかと思います
またもうひとつに、毛穴詰まりはニキビの原因になるという説があると考えられます。しかし、この医学的な毛穴詰まりによるニキビの原因説は、角層やターンオーバーの乱れによって毛穴が詰まり、炎症が起こったり、アクネ菌が増殖することによってニキビの原因になるということが定説であり、その原因を作っているのは年齢、ホルモンバランス、生活習慣の乱れ、食事、紫外線、過剰な洗浄などさまざまな要因が挙げられており、直接ひとつの原因を結びつけることはできませんし、またその中にメイク残りという原因が挙げられている科学的な論文というのは現在ではありません。
ただし、これは「メイク残りが全く毛穴に影響しない」という意味ではないのもまた問題を難しくしているところでもあると感じます。
ここでは、まずこの都市伝説が多くの誤解を生んでいる状況と理解、また何を気をつければ良いのかについて詳しく解説していきたいと思います。
メイク残りという前に。そもそもメイクとはなに?世の中にメイクの種類は数え切れないほどあることを思い出そう
私たちが日常的に使用する「メイク」とは、顔料や油性成分、水性成分などを組み合わせて肌に色や質感を付与する化粧品の総称です。ファンデーション、アイシャドウ、リップ、チークなど、その種類は数えきれないほど存在し、それぞれ異なる目的と成分構成を持っています。
メイク残りがという前に、そのメイク残りとは、どのメイク、どのブランドの何のメイクということを問いましょう。
またメイクはたくさんの原材料でできている
メイク製品は、単一の成分でできているわけではありません。例えば、ファンデーション一つをとっても、色を出すための顔料(酸化チタン、酸化鉄など)、肌への密着性を高める油性成分(各種オイル、エステルなど)、伸びを良くする水性成分(精製水、グリセリンなど)、製品の安定性を保つための界面活性剤や防腐剤など、数十種類の原材料が組み合わされて作られています。これらの成分は、安全性試験をクリアしたもののみが化粧品に配合されます。
どのメイクのどの成分が肌に残っていると肌荒れの原因になるというならまだ分かりますが、おそらく何百万種類もあるもののをメイクと一括りにしている時点でこの逸話がおかしいことに気づかなければなりません。
そして、どの成分といっても、同じ表示名称でも原材料メーカーによって全然違うものであり、メーカーはどこの会社の原材料を使っているかは機密事項のため表示されていないため、知る術がありません。
メイクの構成はオイル、界面活性剤、水溶性成分、顔料でできている。そしてオイル、界面活性剤、水溶性成分はスキンケアで使われている成分が使われ、顔料の多くは肌に良さも悪さもしない物質。
一般的なメイク製品は、大きく分けて以下の4つの成分で構成されています。
- オイル(油性成分): エモリエント効果や、顔料の分散剤として配合されます。スクワラン、ミネラルオイル、植物油、エステル油など、基礎化粧品である乳液やクリーム、美容液にも広く使われている成分です。これらの成分は、適切に配合されていれば、肌に刺激を与えることは少ないとされています。
- 界面活性剤: 油と水を乳化させ、製品の安定性を保つ役割があります。化粧品の乳化技術は日々進化しており、安定性の高い製品が多数開発されています。乳液やクリームなど、多くのスキンケア製品にも使用されており、その種類も多岐にわたります。
- 水溶性成分: グリセリン、BGなどの保湿成分や、防腐剤、香料などが含まれます。これらもまた、スキンケア製品で一般的に使用される成分です。
- 顔料: 色を出すための成分です。酸化チタン、酸化鉄、マイカ、タルク、合成フルオロフロゴパイトなどが代表的ですが、これらは多くの場合、肌に対して化学的な反応を起こしたり、アレルギー反応を引き起こしたりすることは稀です。化粧品用の顔料は、肌への安全性が考慮されており、「不溶性で化学的に安定しているため、肌への浸透や刺激は限定的である」と一般的に理解されています。
メイク残りうんぬんの問題を考える時に。メイク残りが肌荒れの原因になるというのは、誤解が多い
「メイクが残っていると毛穴を塞ぎ、肌荒れやニキビの原因になる」という言説は、一見もっともらしく聞こえます。しかし、前述の通り、メイク製品に使用されている成分の多くは肌に刺激を与えにくいものです。
むしろ、メイクを落とす際の過度な摩擦や、洗浄力の強すぎるクレンジング剤による肌のバリア機能の低下の方が、肌荒れの原因となる可能性が高いと多くの皮膚科医が指摘しています。
例えば、皮膚科領域の専門書では、「物理的な刺激や、洗浄によるNMF(天然保湿因子)や細胞間脂質の流出が、乾燥やバリア機能の低下を招き、肌荒れを引き起こす主要な要因となる」と述べられています。
そもそもつけたメイクを全て取り切るというのは物理的に不可能。
顔料のナノサイズ、マイクロサイズの問題
「メイクを完全に落とす」という考え方自体が、物理的に不可能です。
特にファンデーションなどに使用される顔料は、ナノサイズやマイクロサイズといった非常に微細な粒子で構成されています。これらの粒子は肌の凹凸や毛穴に入り込みやすく、どのようなクレンジング方法を用いても、100%全てを取り除くことは不可能です。
目に見えなくても、肌表面には必ず微量の顔料が残っています。しかし、これが直ちに肌に悪影響を及ぼすというエビデンスはありません。これは、粒子の特性と皮膚の構造に関する物理化学的な考察から導かれる結論です。
また、つけたクレンジング、洗顔料も洗い流したようで洗い流せていない。洗い流した後にさっぱりする、保湿感があるというのはメイクで使われた原材料の使用感か、クレンジングや洗顔料の原材料の使用感。
さらに言えば、クレンジングや洗顔料も、完全に洗い流せているわけではありません。
洗い流した後に感じる「さっぱり感」や「しっとり感」は、実はクレンジングや洗顔料に含まれる界面活性剤や保湿成分が肌表面に残っていることによる使用感です。
これらの成分も、目に見えない形で肌に残存しているのです。この「残存性」は、化粧品の使用感設計において考慮される要素の一つであり、皮膚科学的にも微量の成分が肌に残ることは避けられないとされています。
これの典型例が石鹸を使った後のサッパリ感や洗った感です。石鹸を使った後にさっぱりした、つっぱりしたと感じられる方が多いですが、あれは汚れが落ちたからそうなったのではなく、いわゆる石鹸カスの使用感です。また保湿感を演出するためにグリセリン石鹸などもあります。
そう、つけたものを全てを洗い流すというのは本来不可能なことなのですし、化粧品そのものの楽しみ方を奪う行為になります。
つまり、メイク汚れを落とすというのは見た目上、落ちたように見える行為。全部取り切るというのは不可能
クレンジングや洗顔の目的は、メイクや汚れと言われるものの大部分を目に見える形で除去することであり、それによって肌を清潔に保つことです。
しかし、前述の通り、微細なレベルでの完全な除去は不可能です。「洗浄」とは、汚れを物理的・化学的に除去するプロセスですが、完全にゼロにすることは難しいとされています。見た目上メイクが落ちているように見えれば、それで十分と言えるでしょう。
過度に「全てを落としきる」ことに執着することは、かえって肌に負担をかけることになりかねません。本当に全て取りきりたい場合はターンオーバーを待つしかありません
そして何より、メイク残りを気にするより、肌を洗いすぎて皮脂や保湿因子など、肌を守っているものを落とし過ぎるほうがかえって肌荒れの原因になりやすいということは覚えておいた方が良いと思います。
メイク残りが酸化して肌に悪さをするというウソ。
「メイク残りが酸化して肌に悪い影響を与える」という説も、よく耳にします。しかし、これもほとんど根拠のない誤解です。メイク製品、特に油性成分は、酸化しやすいものもありますが、それは製品そのものが長期間、空気や光に触れることで起こる現象です。肌に塗布されている短時間で、肌に悪影響を与えるほど酸化が進むことは極めて稀です。
化粧品に含まれる油性成分の酸化に関しては、多くの研究が行われています。例えば、化粧品の品質安定性に関する論文では、製品中に配合される酸化防止剤(トコフェロールなど)が、製品の酸化を抑制する役割を果たすことが示されています。肌の上での皮脂との混合は起こりますが、それによってメイクの油性成分が急激に酸化し、肌に有害な物質を生成するという明確なメカニズムや実証データは今のところ存在しません。
こちらに関してはオイルの酸化問題でも取り上げさせて頂いたのでぜひこちらもご覧ください
https://miule.jp/blogs/column/250604
夕方にメイクがくすんだように見えるのはメイクの油性成分が酸化したからではなく、メイクの乳化が崩れたことによる、顔料の分散具合の現象
夕方になるとメイクがくすんだように見える、と感じることがあるかもしれません。これを「メイクの油性成分が酸化したため」と考える人もいますが、これは誤りです。
主な原因は、メイクの乳化状態が時間とともに崩れること、そして皮脂分泌などによって顔料が肌の上でムラになり、分散状態が変化することです。
化粧品の乳化技術や顔料分散技術に関する専門書によれば、メイクアップ製品は肌に塗布された後、皮脂や汗、時間の経過とともに初期の均一な乳化構造が変化します。
この変化により、顔料の光の反射や透過性が変わり、結果として色がくすんで見えたり、ムラになったりすることがあります。これは、油性成分の酸化とは異なる物理的な現象です。
メイクは日中つけてるぐらいでは簡単には酸化しない。酸化するのであれば、すでにつける前に酸化している
繰り返しになりますが、メイク製品は適切な条件下で保管されていれば、日中肌に塗布している程度で容易に酸化することはありません。
化粧品メーカーは、製品の安定性を確保するために、さまざまな安定性試験(高温、低温、光照射など)を実施しています。もし製品が酸化しやすいのであれば、それはすでに開封前から酸化が進んでいる可能性があり、そのような製品は酸化臭や色の変化で分かります。
酸化したコスメをつけることは気をつけなければなりませんが、日中つけている時に酸化するぐらいの化粧品の安定性の製品であれば、使う時にはとっくに酸化している商品の可能性が非常に高いです。ですので、日中の酸化というのは気にしなくて良いというのが結論です。
忘れてはいけない。メイク残りが気になる人の大半は毎日お風呂に入る。
私たちがメイクをするのは日中のみであり、クレンジングや洗顔をした後に、多くの人は毎日お風呂に入り、人によっては洗顔をします。
つまり、メイクが肌に付着している時間は限られており、またメイク残りが気になる人もお風呂に入って無意識に顔を洗っています。
この事実を考えると、微量のメイク残りが継続的に肌に悪影響を及ぼすという考えは、現実的ではありません。メイク残りが気になるというのはお風呂に入らない人、入らなかった日のことと考えるとまだ分かりますが、多くの人はお風呂に入りそこでもある程度落としきれなかったメイクはある程度勝手に落ちてしまいます。
肌荒れの可能性がある顔料や原材料も確かに存在はする。でもそれはメイク残りの問題やメイク落としの問題ではなく、メイクの種類、何を選ぶかの問題
全ての顔料が肌に完全に無刺激であるわけではありません。ごく稀に、特定の顔料に対してアレルギー反応を示す方がいることは事実です。そして、それは人によって違います。
しかし、これは「メイク残り」の問題ではなく、「メイクの種類」、つまり「どのメイク製品を選ぶか」の問題です。
例えば、化粧品による接触皮膚炎に関する研究では、特定の成分がアレルゲンとなることが報告されています。もし肌に合わない顔料が含まれている製品を使用した場合、それは使い始めから肌荒れを引き起こす可能性があります。メイク残りが原因で突然アレルギー反応が起きる、ということは考えにくいでしょう。これは、アレルギー反応が起こるには、十分な量のアレルゲンへの暴露と感作が必要であるという免疫学的な原則に基づいています。
覚えておきたい人によって肌荒れリスクがあるメイク顔料一覧
もし、特定の顔料で肌荒れを経験したことがあるのであれば、以下の成分に注意してみてください。ただし、これらはあくまで「可能性」であり、全ての人に肌荒れを引き起こすわけではありません。
タール色素(法定色素): 赤色○号、黄色○号など。鮮やかな発色を出すために使われますが、稀にアレルギー反応を示す方がいます。特に、一部のタール色素は過去にアレルギー性接触皮膚炎の原因として報告された例があります。
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- 赤色2号 (別名アマランス)
- 赤色3号 (別名エリスロシン)
- 赤色102号 (別名ニューコクシン)
- 黄色4号 (別名タートラジン)
- 黄色5号 (別名サンセットイエローFCF)
- 青色1号 (別名ブリリアントブルーFCF)
- 青色2号 (別名インジゴカルミン)
これらの色素は、化粧品に広く使用されていますが、まれに肌荒れを引き起こす可能性があります。成分表示をよく確認し、ご自身の肌に合う製品を選ぶようにしてください。
- ニッケル、コバルト、クロムなどを含む顔料: 特に安価なアイシャドウやチークなどで使用されることがあり、金属アレルギーを持つ方は反応することがあります。これは、金属イオンが皮膚に浸透し、アレルギー反応を引き起こすメカニズムに基づいています。こちらもよく言われる成分ですが、原材料の精製度の話になってくるため、残念ながら表示名称からは全く分かりません
- 一部の酸化鉄(特に不純物が多いもの): 精製度が低い場合、肌に刺激を与える可能性があります。ただし、化粧品グレードの酸化鉄は通常、非常に精製されており安全性が高いため、現在ではほとんど気にする必要はないかと思います。
- カルミン(コチニール色素): 天然由来の色素ですが、稀にアレルギー反応を起こす方がいます。
大前提としてこれらの顔料が含まれていても、ほとんどの人は実際は問題なく使用できます。今回あくまで顔料について記載しましたが、その他原料も同じなため、それぞの体質や肌に合うかはとても重要です。もし肌荒れが気になる場合は、成分表示を確認し、腕の内側などでパッチテストを行うなどして、ご自身の肌に合う製品を選ぶことが重要です。
ようやくここでセラクレンズやオイル洗顔を含めたティッシュオフによるメイク落としのメイク残りが気になるかどうかを考えなければなりません
ここまで話してきたことをまとめると
- メイク残りが肌荒れの原因になる、毛穴が詰まるという科学的根拠は今のところない
- ニキビの要因や毛穴が詰まる要因は多岐にわたり、これだという原因をつかむのは難しい
- メイク成分に自分の肌と合わない成分があるかないかが重要
- 特に合わない成分がない場合、多少残っていても気にする必要がそもそもない
- 見た目上取れていれば、取れている状態として満足すること
- メイク残りよりも洗いすぎによる肌荒れの方がよほどニキビには大敵
- オイル洗顔で使用する化粧品もメイク同様にその人にとって肌に合う成分かどうかが大事
- 自分の肌が荒れたからといって、他人に当てはまるかどうかは全く分からない
というのがよく分かったのではないでしょうか?
オイル洗顔の製品作りをしているとこの関連のご質問は本当に多く聞きます。しかしながら、あまりにも色んな都市伝説が飛び交い、また常識化、定説化しているなかで、それに意を唱える内容を伝えようとした場合に、情報を消化しきれない場合が多く、また伝えようとすると情報量が多すぎることにより、簡潔に説明できないジレンマが発生します。
今回を機にメイク残りって本当に肌が荒れるの?っていうことをもう一度考えてみてはいかがでしょうか