「毛穴が詰まる」は本当に見える?化粧品メーカー研究者が語るSNSで話題の疑問
2025. 11. 28
🧐 「毛穴が詰まる」は本当に見える?化粧品メーカー研究者が語るSNSで話題の疑問
🔍 SNSで頻繁に見る「毛穴が詰まる」という話題の不思議
美容に関する情報が溢れるSNSを見ていると、「この成分が毛穴に詰まる」「この商品を使うと毛穴が詰まる」といった話題を非常に頻繁に目にします。特に「酸化亜鉛が毛穴に詰まる」といった具体的な成分名が挙げられることも少なくありません。また、「毛穴が黒ずむ」といった話題もよく見られますが、今回は「毛穴が詰まる」という現象に焦点を当ててみたいと思います。
しかし、化粧品の開発に携わるメーカーの人間として、この「毛穴が詰まる」という現象が目視できるのか、という点に昔から大きな疑問を感じていました。
裸眼や鏡で「毛穴の詰まり」は本当に見えるのか?
皆様は、鏡で自分の顔を覗き込んだ際、「毛穴が詰まっている」様子をはっきりと確認できるでしょうか?
個人的な見解として、鏡に顔をかなり近づけたとしても、あるいは遠ざけたとしても、「毛穴が詰まる」という状態を明確に理解することは難しいと感じています。
そもそも毛穴は非常に小さいため、肉眼で「詰まっているかどうか」を確認することは不可能に近いのではないでしょうか。視力の良い方なら見えるのかもしれませんが、視力2.0であったとしても、「毛穴の詰まり」までは見えないというのが、僕自身の経験です。
毛穴自体が見えることはあると思いますが、その「詰まり」の状況までを肉眼で確認するのは、極めて難しいはずです。
それにもかかわらず、SNSでは「毛穴が詰まっている」という話や、「この成分・原料が毛穴に詰まる」という議論で大いに盛り上がっています。これは非常に不思議な現象だと感じています。
🔬 詰まっている「ように見える」が正解ではないか?
SNS上での議論は、美容を楽しむ上での大切な要素であり、商品レビューや批評の文化も否定するつもりは全くありません。しかし、この「毛穴が詰まる」という現象については、**「毛穴に詰まったように見える」**という表現が、より実態に近いのではないかと考えています。
本当に毛穴に詰まっているかどうかは、毛穴が小さいため肉眼では確認できません。例えば、電子顕微鏡のような高い精度の顕微鏡で観察すれば、「毛穴に詰まっている」状態が判明する可能性はあります。しかし、日常の目視レベルでは、「詰まっているかどうかは分からないけれど、詰まったように見える」というのが現実ではないでしょうか。
この捉え方の違い—「毛穴が詰まる」と捉えるか、「毛穴が詰まったように見える」と捉えるか—は、化粧品開発のアプローチにおいて非常に大きな差を生みます。
🧪 酸化亜鉛(Zinc Oxide)を例に考察する「詰まって見える」理由
「毛穴に詰まる」という話でよく登場する成分の一つに、「酸化亜鉛(Zinc Oxide)」があります。酸化亜鉛は、酸化チタンと共に、UVカット剤(紫外線散乱剤)として日焼け止めや化粧品に広く使用される原料です。
化粧品メーカーの開発者として、数多くの原料を見ている経験から、酸化亜鉛がなぜ「毛穴に詰まって見える」のか、その個人的な見解を解説します。
1. 酸化亜鉛の「白さ」と「凝集しやすい」特性
酸化亜鉛が毛穴に詰まって見える要因は、主にその「色」と「粒子特性」にあると推測されます。
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極めて白い色 酸化亜鉛は、同じUVカット剤である酸化チタンと比較して、非常に「真っ白い」という特性があります。酸化チタンは透明感があり、やや青みがかって見える(ブルーがる)のに対し、酸化亜鉛は表現が難しいほどに純度の高い白さを持ちます。
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凝集(ぎょうしゅう)しやすい性質 酸化亜鉛の粒子(マイクロサイズ、あるいはナノサイズ)は、互いにくっつき合う凝集しやすい特性を持っています。
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この粒子がくっつかないほど、透明に見えます。
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逆に粒子がくっつけばくっつくほど、白く見えるようになります。
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2. タンパク質や角栓への「付着しやすい」性質
また、酸化亜鉛は、タンパク質や角栓にくっつきやすいとも言われています。
これらの特性を組み合わせると、以下のメカニズムが考えられます。
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酸化亜鉛は非常に白い。
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酸化亜鉛は凝集しやすい。
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酸化亜鉛は毛穴から出ている角栓(タンパク質)にくっつきやすい。
この結果、「白い酸化亜鉛の粒子が、凝集した状態で角栓にくっつき、その白い塊が毛穴から顔をのぞかせている」状態になる可能性があります。これが、目視した際に「毛穴が詰まっているように見える」**原因ではないか、というのが僕の個人的な見解です。
💡 「詰まって見える」を解決するためのアプローチ
もしこの現象が本当に「詰まっている」のではなく、「詰まったように見える」だけであれば、開発側としては様々な改良の余地が生まれます。
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毛穴が詰まる(物理的な閉塞):この場合は、毛穴に物理的に入らないように粒子のサイズを調整したり、処方を見直す必要があります。
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毛穴が詰まったように見える(視覚的な問題):この場合は、酸化亜鉛が「凝集する」のを防いだり、「角栓にくっつきにくくする」ような処方改良を行うことで、見た目の問題が解決できる可能性があります。
特に酸化亜鉛の場合は、凝集を防ぎ、タンパク質などへの付着性をコントロールする処方に改良することで、「詰まって見える」という課題をクリアできる可能性は十分にあると考えられます。
💄 ユーザー側でできる「詰まって見えなくする」工夫
この「詰まって見える」という視点は、メーカーの開発だけでなく、私たちユーザーの使い方にも応用できます。
「詰まったように見える」という現象であれば、同じ商品であっても、使い方を変えるだけで、その見え方をコントロールできる可能性があります。
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塗り方を工夫する:ある特定の塗り方では毛穴が詰まったように見えるが、別の塗り方(例えば、薄く均一に伸ばす、毛穴に対して垂直ではなく平行に塗るなど)を試すことで、詰まって見えなくすることが可能かもしれません。
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組み合わせるアイテムの工夫:次に使用するファンデーションやベースメイクアイテムとの相性で、見え方が変わることもあります。
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スキンケアの見直し:角栓自体をケアし、毛穴から飛び出している角栓を物理的に減らしたり、ふやかしたりすることで、酸化亜鉛などの白い粒子が付着する「土台」を減らすアプローチも有効です。
このように「詰まる」ではなく「詰まったように見える」と捉え直すことで、私たちが日常で取れるアプローチの幅は格段に広がります。
📝 まとめ:SNSでの議論との向き合い方
SNSでは、今日も「この商品が毛穴に詰まる」「この成分は危険だ」といった議論が活発に行われています。美容の教科書や論文では言及されていない現象が、SNSでは大きな話題になることは美容業界では非常に多く見られます。
しかし、これらの情報に接する際は、「意見は意見として聞く」というスタンスが大切だと考えています。
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鵜呑みにしないこと:特に「毛穴が詰まる」といった、肉眼で確認が難しい現象については、それが「詰まっているのか」、それとも「詰まったように見えているのか」という視点を持って接することが、賢い情報収集に繋がります。
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多角的に考えること:今回のように、ある成分の特性(白さ、凝集性)を知ることで、「なぜそのように見えるのか」という原因を深く掘り下げて考えるきっかけになります。
このテーマについて深く考えることは、皆様の美容に対する知識を深め、より論理的な商品選び、使い方を見つける上で非常に面白い視点を与えてくれるはずです。
皆様も、ぜひ様々な美容の議論について「なぜ?」という問いを持ち、一歩深く考えてみてください。
